友人とクラウドファンディングを始める?

始めるのは、どんなクラウドファンディング?

ウゴモーションは、2020年10月5日(月)から中心メンバーの1人として、クラウドファンディングに挑戦することとなった。クラウドファンディングの名称は「学生に知ってほしい痴漢の真実 : アニメーション制作プロジェクト」というもので、ウゴモーションはアニメーションの制作を担当することになっている。
 
2019年12月から少しずつ準備を進めてきて、このブログが公開される頃には、クラウドファンディングが始まっている予定だった。ところが、2020年3月頃から新型コロナウィルスが日本でも広く蔓延してしまい、クラウドファンディングの世界は新型コロナウィルスによる被害の救済ブロジェクトで埋め尽くされるようになった。
 
自分たちのプロジェクトに大きな社会的意義があることは分かっているけれど、今、社会に求められているのは、新型コロナウィルスによる被害の救済ブロジェクトである。というのが「学生に知ってほしい痴漢の真実 : アニメーション制作プロジェクト」中心メンバーの一致した考えであり、クラウドファンディングを行うREADYFORの担当者さんも同じであった。
 
なので、クラウドファンディングは大きく延期することとなり、2020年10月5日(月)に支援金の募集を開始して、2020年11月20日(金)にクラウドファンディングを終了することに決定した。目標額よりも多くの支援金が集まれば、「学生に知ってほしい痴漢の真実」というアニメーションを制作して、誰でも見られるようにYouTubeなどで公開することとなる。
 
今回の「学生に知ってほしい痴漢の真実 : アニメーション制作プロジェクト」は、私の友人である松永 弥生さんの活動に協力するためのクラウドファンディングだ。
 
松永さんは親友の娘さんが起こした行動に感銘を受けて、たった1人でプロジェクトを立ち上げ、2015年に「Stop痴漢バッジプロジェクト」というクラウドファンディングを成功させた人である。現在は一般社団法人 痴漢抑止活動センターを運営しながら、痴漢抑止バッジの販売、痴漢抑止バッジデザインコンテストの開催を続けている。
 
松永さんとは、松永さんが痴漢抑止の活動を始めるまえから、私が利用しているコワーキングスペースでの知り合いであった。その頃から、お互いの仕事のこととか、新たに始めるプロジェクトのこととか話したり議論したりするような仲で、痴漢抑止バッジのこと、一般社団法人のことなどもよく話し合っていた。
 
というわけで、今回の投稿では「学生に知ってほしい痴漢の真実 : アニメーション制作プロジェクト」について、あれこれ書いていこうと思っている。ウゴモーションの新たなる挑戦に、少しでも興味を持ってもらえたら嬉しい。
 
≫ 学生に知ってほしい痴漢の真実 : アニメーション制作プロジェクト
≫ 一般社団法人 痴漢抑止活動センター

なぜ、松永さんの活動に協力することにしたのか?

思えば、松永さんは痴漢抑止バッジの活動が軌道に乗るようになってから、いつか動画を活用したいと言ってくれていた。実のところ、痴漢抑止バッジのような社会運動と、ウゴモーションが得意としているモーショングラフィックスは相性が良い。
 
多くの社会運動・慈善活動は、独自の仕組みで社会問題を解決しようとする。利益を出すことが目的ではなく、社会問題を解決したり、困っている人間を助けたりすることが目的なので、お金を支払う人と、サービスを受ける人が違っているのも社会運動・慈善活動の特徴である。
 
もし誰かが、自分たちの社会運動・慈善活動をより多くの人に理解してもらいたいと考えた場合、どのような方法があるだろうか?
 
多くの場合、Webサイトで文章・写真・図解などを使って、どんな社会問題があり、どんな仕組みでその問題を解決しようとしていて、どんな結果が出ているのかを紹介することだろう。
 
Webサイトで社会運動・慈善活動を紹介する利点は、まとまった情報を詳しく紹介できるところである。ただし、理解してもらうという目的を達成するためには、紹介されている情報が整理整頓されていて、分かりやすく構成されていることが必須である。
 
ところが、情報を整理整頓して、分かりやすく構成するというのは、決して簡単なことではない。もし誰でも簡単にそれができるのであれば、人類社会はもっと摩擦が少なく、問題を解決しやすく、意思決定がスムーズに進んでいく社会になっていただろう。
 
分かりやすいというのは、それぐらい難しいことであり、それだけで大きな価値がある。

モーショングラフィックスが得意なこと?

モーショングラフィックスは、動画やアニメーションのさまざまな制作手法の中でも、情報を分かりやすく伝えることを得意としている。イラストやグラフィックスを動かすことが表現の中心なので、見ているだけで直感的に理解できる、動きのある図解みたいなものを制作することができる。
 
プラスしてモーショングラフィックスでは、グラフィックスや色彩で情報を分かりやすく配置したり、動きで視聴者の視線を思ったところへ誘導したり、ナレーションで解説を加えたり、音楽で世界観を表現したり、表現するものすべてを意図的にデザインすることができる。
 
なので、情報を分かりやすく伝えたい、とにかくカッコ良さを伝えたいなど、どんな意図であっても、モーショングラフィックスであれば論理的にも感情的にも感覚的にも表現できる。
 
なので、欧米では自分たちの社会運動・慈善活動を紹介するのに、実写動画だけでなくモーショングラフィックも積極的に活用されている。そこには、欧米では社会運動・慈善活動であっても、日本とは比べものにならないぐらい多額の寄付を集めることができるNPOがあるので、そのおかげで積極的で創造的なプロモーションができるという社会背景もある。
 
そんな欧米の事情を知っていたので、ウゴモーションとしても、いつか社会運動・慈善活動を宣伝・紹介したりするモーショングラフィックスを制作できたら良いのになと考えていた。
 
だから、松永さんから痴漢抑止活動に役立つアニメーションを制作したいと相談されたとき、これは大きなチャンスだと感じた。
 
単純にアニメーションの制作として協力するだけでなく、その出発点であるクラウドファンディングから協力することにしたのも、それがウゴモーションの可能性を広げて、新たな一歩となると感じたからであり、世のため人のためになるのはもちろん、自分のためにもなる挑戦だと確信したからである。

松永さんから借りた書籍を読んで...

どんなアニメーションを制作するのか考えるためには、まず痴漢についての実態を理解することが必要だと、松永さんから借りたのが「男が痴漢になる理由」という書籍だった。執筆したのは、斉藤章佳(さいとう あきよし)という痴漢犯罪者の治療などを行っている精神保健福祉士・社会福祉士の人である。
 
書籍「男が痴漢になる理由」を読んで、私が一番感じたのが、痴漢という行為が性的欲望によるものだけでなく、ハラスメント(他人を攻撃することでストレスを発散する行為)によるものも多くて、それらが電車という公共空間で垂れ流しになっている恐ろしさであった。
 
さらには、1人の痴漢犯罪者を放置すると、行為がどんどんエスカレートして、被害者がどんどん増えていき、被害が深刻になっていくという痴漢犯罪者の特性にも大きな恐怖を感じた。
 
だから、松永さんが学生たちに痴漢についての正しい知識を持ってほしいと考えていることに、素直に共感したし、素晴らしいアプローチだと感じた。正しい知識を持つことが、自分を守るための武器にも防具にもなることは、現在、新型コロナウィルスが蔓延しつつある世界で生きている多くの人にとっても理解できることだろう。
 
痴漢についての正しい知識は、そもそもデリケートな情報であり、大人に相談したり、誰かと議論したりするのが難しい情報である。そんな扱うのが難しい痴漢についての知識も、モーショングラフィックスであれば、多くの学生が理解しやすいように伝えられるのではないかというのは、松永さんの慧眼(けいがん)である。
 
痴漢犯罪者のターゲットとなるのは、ほとんどの場合、女性であり、女子学生である。それも通勤通学中の電車内で、日常的に行われている。この被害を減らし、犯罪を止めるためには、社会的にさまざまな変革が必要で、決して簡単なことではない。
 
モーショングラフィックスが完成した暁には、YouTubeにアップして誰でも永続的に見られるようにする予定で、松永さんが毎年行っている「痴漢抑止バッジデザインコンテスト」でも、デザインをしてくれる学生に必ず見てもらうようにする予定だ。
 
正しい知識が、痴漢犯罪に対して武器となり防具となってくれるのであれば、それほど素晴らしいことはない。
 
以上が、松永さんの活動に協力することにしたウゴモーションの理由である。
 
≫ 男が痴漢になる理由 - Amazon.co.jp
≫ 第6回痴漢抑止バッジデザインコンテスト

クラウドファンディングを成功させるための準備?

先にも書いたように、今回の「学生に知ってほしい痴漢の真実 : アニメーション制作プロジェクト」では、ウゴモーションは制作を担当するだけでなく、出発点であるクラウドファンディングから積極的に関わっていくことになる。
 
これには理由があって、まずは松永さんがクラウドファンディングの成功について不安を感じていたので、助けが必要だなと感じたこと。松永さんからすると、アニメーション制作というのは、今まで経験がしたことがない異分野のことであり、計画から制作までどのように準備を進めて良いのか分からないので、余計に不安を感じるという面もあったのだろう。
 
もう1つは、これからの時代、アニメーションなどの制作資金を集める方法として、クラウドファンディングがますます重要になるからだ。ウゴモーションを長期的に発展させるために、いつかクラウドファンディングで制作資金を集めることがあるかもしれないし、世のため人のためにプロジェクトを立ち上げることがあるかもしれない。
 
そう考えると、クラウドファンディングを成功させるため、計画を立て、アイデアを出し、仲間を集め、チームであれこれ議論し、さまざまな行動を起こし、成功したり失敗したりする、その経験自体がウゴモーションにとって大きな財産になる。
 
だからこそ、今回の「学生に知ってほしい痴漢の真実 : アニメーション制作プロジェクト」では、制作だけを担当するのではなく、クラウドファンディングの準備から私もチームの中心として積極的に活動することにしたのである。
 
というわけで、松永さんとあれこれ相談して、クラウドファンディングを成功させるために、大きく分けて3つの準備に取り組むこととなった。
 

準備その1 クラウドファンディング・サービス選び

松永さんはクラウドファンディングを大きく成功させた経験があり、一般社団法人 痴漢抑止活動センターの運営を通じて、さまざまなクラウドファンディングについて詳しく知っている。
 
その松永さんが言うには、クラウドファンディングにもいろいろなサービスがあるそうで、
サービスによって成功しやすいプロジェクトが違ったり、料金体系が違ったり、サービス内容が違ったり、成功確率が違ったりするとのこと。
 
今回の「学生に知ってほしい痴漢の真実 : アニメーション制作プロジェクト」の場合、そもそも確実に成功するようなプロジェクトではないので、サービス料金が高くても良いから、成功する可能性が高くなるようなサービスを選ぼうということで、松永さんとは意見が一致した。
 
そんな松永さんが選びに選んだのが、READYFORというクラウドファンディングのサービスである。READYFORにはフルサポートプランというものがあり、それを選ぶと手数料が高くなるものの、クラウドファンディングを行うときに、キュレーターと呼ばれる担当者がついてくれるので、成功する可能性がとても高いのだそうである。
 
READYFORのキュレーターさんは定期的にチームと打ち合わせを行なってくれ、クラウドファンディングを成功させるために必要なノウハウを教えてくれたり、情報の整理をしてくれたり、アドバイスをしてくれたり、チームを成功へと導いてくれる。
 
というわけで、キュレーターさんとの打ち合わせは松永さんに一任することとなり、定期的にキュレーターさんからサポートやアドバイスを受けることで、なにが必要なのか理解しつつクラウドファンディングの準備を進められるようになった。
 
≫ クラウドファンディング - READYFOR

準備その2 協力してくれるチームづくり

READYFORの担当者さんが教えてくれたことによると、クラウドファンディングが成功するかどうかは、チームメンバーを集められるかどうかが、とても重要とのこと。クラウドファンディングで集まる支援金の多くは、チームメンバーが持っている人間関係から集まるのだそうで、そもそも人間関係が少ないと、支援金が集まりにくくなるのだそうである。
 
その話を聞いて、ギクっとしたのが私である。
 
松永さんは、これまで数年にわたって痴漢抑止の活動を続けているので、それに共感する人たちの輪をすでに持っている。
 
一方で、私の方はというと、ウゴモーションでの制作はほとんど1人で進めていて、仕事仲間は少ない。おまけに、根っからの内向的人間なので、プライベートでの友達も少なく、誰とでも仲良くするのというのが苦手な人間である。
 
つまり、私が持っている人間関係はとても少ない...(汗)
 
そこで、松永さんと相談して、他にも共感して協力してくれるチームメンバーを集めることにした。幸い、私と松永さんはオオサカンスペースというコワーキングスペースに在籍していて、周囲にはフリーランスで活動している人や、起業している人がたくさんいる。
 
プラスして、私はMEBICという大阪市が運営を委託しているクリエイターを支援する機関にも、クリエイターとして登録している。
 
そこで、私と松永さんは、MEBICのクリエイター網を活用して、モーショングラフィックスのグラフィックスを専門に担当してくれるクリエイターを探すことにした。そして、オオサカンスペースでは、メディアやマスコミ向けの広報を担当してくれる人、SNSなどの活用に優れている人、プロジェクトについて相談に乗ってくれる人を集めることにした。
 

学生に知ってほしい痴漢の真実 : アニメーション制作プロジェクト

  • 発起人 / 松永 弥生(一般社団法人 痴漢抑止活動センター)
  • クラファン担当 / 松永 弥生
  • アニメ制作担当 / 小野 直人(ウゴモーション)
  • グラフィックス制作 / 増喜 尊子(増喜設計室)
  • コンテンツ制作 / 松永 弥生・小野 直人
  • 広報アドバイザー / 女性アントレプレナーAさん
  • SNSアドバイザー / 女性アントレプレナーBさん
  • 進行アドバイザー / 女性アントレプレナーCさん

 
READYFORの担当者さんによると、チームメンバーは10人ぐらいがベストとのことだったけれど、松永さんの影響力の強さなどを考えると、ひとまず充分なメンバーを集めることができたのではないかと思う。
 
≫ 増喜設計室

準備その3 クラファンのコンテンツづくり

クラウドファンディングだけでなく、Webで展開している多くのサービスやビジネスでは、新たな情報(コンテンツ)を出しつづけることが重要になる。どんどん情報が更新されていれば、活発に活動しているプロジェクトだと認識され、多く人に注目してもらえるチャンスが広がるからだ。
 
そこで「学生に知ってほしい痴漢の真実 : アニメーション制作プロジェクト」でも、クラウドファンディングの期間中にできるだけ新たな情報を出していけるように、コンテンツづくりが重要であるということで松永さんと意見が一致した。
 

クラウドファンディング期間中のコンテンツ内容

  • どんなアニメーションを制作するのかを紹介するコンテンツ
  • 松永さんが続けてきた痴漢抑止活動を紹介するコンテンツ
  • 支援者からメッセージとそれへの感謝を紹介するコンテンツ

 
今回の「学生に知ってほしい痴漢の真実 : アニメーション制作プロジェクト」では、可能なかぎり事前に、これらのコンテンツづくりを準備することにした。松永さんもウゴモーションも自分の仕事をしながらのクラウドファンディングになるので、その期間中に重要な仕事が来てしまったら、肉体的にも精神的にも大変なことになってしまうからだ。
 
準備するコンテンツは文章だけでなく、グラフィックスや動画など、自分たちが得意なものを使って展開することにした。
 
この投稿を書いている時点で、アニメーションの内容づくりは、ナレーション原稿が完成して、絵コンテの基本部分が完成して、動画コンテの第一弾ができている状態だ。また、松永さん自身がこれまでの活動や痴漢抑止について語る動画も、かなりの数を撮影していて、すでに開設しているYouTubeチャンネルで公開している。
 
松永さんの頑張りのおかげで、READYFORで公開するページもすでに完成している状態で、クラウドファンディングの準備はちゃくちゃくと進んでいる。

アニメーションを制作するための準備?

クラウドファンディングを成功させるには、多くの人が実現してほしいと願うようなアニメーションを制作することが重要になる。そのためには、クラウドファンディングで支援金を集めるのに成功してから、アニメーションの内容を考えているようではダメだ。
 
具体的にどんな内容のアニメーションを制作しようとしているのか明らかにしてから、多くの人に支援をお願いするのが、クラウドファンディングとしてまっとうな順序である。真剣に世のため人のためにプロジェクトを成功させたいと考えていて、そのために真剣に準備を進めているようでないと、多くの人から支援を得ることは難しいだろう。
 
それに、どんな内容のものを制作しようとしているのか分かれば、多くの人にとって、このクラウドファンディングを支援したい、支援したくないという決断もしやすい。
 
そこで、松永さんと私は、クラウドファンディングを開始する前に、どんなアニメーションを制作するのか、その内容を具体的に作っていくことにした。
 
ここで問題となったのが、松永さんが持っていたのが、痴漢抑止についてアニメーションを制作したいという願望だけで、具体的な要望を持っていなかったことだ。松永さんとしては、制作資金と願望さえ用意すれば、あとはウゴモーションがちゃんとしたものを制作してくれると思い込んでいたようである。
 
実はこれ、クリエイティブな制作を依頼したことがない人「あるある」である。
 

依頼者が具体的なことを考えていない場合は?

私の経験だと、依頼者がどんなものを制作してほしいか、具体的な考えを持っているケースは非常に少ない。 そこで、クリエイターが最初に依頼者にお願いするのがヒアリングである。ヒアリングでは、依頼者がどんな問題や要望を持っていて、それをどのように解決したいと考えているか、ねほりはほり聞き出していく。
 
今回の場合、松永さんが痴漢抑止の活動をしていることについては、そこそこ理解していた。逆に、痴漢のリアルな実態や知識について、私のほうが知識が乏しかったので、まずは松永さんから貸していただいた書籍を読んだりするところからスタートした。
 
書籍を読むことで松永さんと痴漢ついて対等に話ができるようになったので、次に、松永さんと協力してコンセプトを作ることにした。コンセプトとは、どの方向へ制作を進めていけば良いか、誰でも理解できるように言語化したもののことである。
 
ホワイトボードを前にして、松永さんにあれこれ質問しながら、どんなものを制作したいのか焦点を絞っていこうとしたのだけれど、これがなかなか大変だった。
 
松永さんは数年にわたって痴漢抑止の活動をしてきた経験があって、多くの人へ伝えたい出来事や思いを無数に抱えている。せっかくアニメーションを制作するのだから、伝えたいことをすべて伝えたいと考えるのも当然で、なぜ最初にコンセプトを作る必要があるのか、あまり理解していないようだった。
 
コンセプトを作ることの利点は多々あるけれど、大きな利点の1つは、制作するものの焦点を絞ることができるところである!
 
どんなプロジェクトでも、無限の予算があるのであれば、すべてを伝えるアニメーションを制作することができるだろう。しかし、予算も、時間も、視聴する人の忍耐力も、人間世界のあらゆる物事には制約と限界がある。すべてが限られている中で、それらを効果的に活用するためには、誰に、何を、どう伝えるのか、焦点を絞ることが重要になる。

アニメーションの使用方法から見えたコンセプト?

松永さんの話を聞いていて、私が注目したのが、松永さんがアニメーションをどのように活用しようと考えているのかという使用方法だった。
 
松永さんは、毎年「痴漢抑止バッジデザインコンテスト」というのを開催していて、デザインを学んでいる学生から、痴漢抑止バッジのデザインを募集している。松永さんは、これから痴漢抑止バッジをデザインする学生たちに、痴漢についての理解を深めるためにアニメーションを視聴してほしいという要望を強く持っていた。
 
ということは、アニメーションを視聴してほしい対象は学生であり、学生が痴漢についての知識をさまざまな方向から理解できるものを制作すれば良いということになる。
 
そこで生まれたのが「学生に知ってほしい痴漢の真実」というコンセプトである。
 
このコンセプトをホワイトボードに書いたとき、松永さんがまじまじとそれを見つめながら「私が制作してほしいものは、最初からこれだよ!」と力強く言った。実のところ、3時間ほど質問と議論を続けてきた結果、このコンセプトができたのだけれど、「最初からこれだよ!」と言われるのはそれほど珍しいことではない。
 
制作のコンセプトを作るとき、私の場合、依頼者が心に抱いている思いや要望を材料にする。材料が依頼者の心の中にあるものなのだから、めちゃくちゃな加工や調理をしないかぎり、できあがるコンセプトは、依頼者が最初から心の中に持っているものとほぼ同じになる。
 
要するにコンセプト作りのときに私がやっているのは、依頼者が心の中に持っている要望を言語化して、要点をまとめてシンプルな文章にしているだけである。なので、作ったコンセプトを見つめて、依頼者が「私が制作してほしいのは、最初からこれです!」と反応するのも、決して珍しいことではないのである。
 
松永さんと一緒に作った「学生に知ってほしい痴漢の真実」は、コンセプトの枠を超えて、アニメーションのタイトルとなり、今回のクラウドファンディングのプロジェクト名となった。

ウゴモーションでのアニメーション制作の手順?

ウゴモーションでは、多くの場合、次のような手順でアニメーションを制作する。

  1. アニメーションでどんな内容を描くか、要点をまとめる。
  2. アニメーションの時間に合わせて、ナレーション原稿を作る。
  3. ナレーション原稿に合わせて、絵コンテを作る。
  4. テスト・ナレーションと絵コンテを組み合わせて、動画コンテを作る。
  5. 絵コンテに合わせて、グラフィックスを作る。
  6. グラフィックスをアプリケーションに読み込んで、アニメーションを作る。
  7. アニメーションに合わせて、音楽を選んで、購入する。
  8. プロのナレーター会社に依頼して、ナレーションを録音する。
  9. アニメーション、音楽、ナレーションを組み合わせて、完成させる。

 
松永さんと作った「学生に知ってほしい痴漢の真実」というコンセプトが、この手順のどこで役立つかというと、ほぼすべての手順で役立つ。
 
アニメーションでは、制作を進めていく過程で、無数のさまざまな意思決定が必要になる。制作過程では、制作チームだけでなく依頼者や利害関係者との調整も必要となるので、それぞれの人間がバラバラな考えを持っていると、なにを目標に基準にして意思決定をすればいいのか分からなくなる。
 
そんな時に役立つのが、コンセプトである!
 
制作を進めていく過程で、コンセプトが方向性を決める目標となり、基準となる。
 
例えば、アニメーションでどんな内容を描く必要があるのか決めるとき、ほとんどの依頼者はできるだけ多くの内容を入れてほしいと望む。前章でも書いたように、限られたリソースを有効活用するためには、できるだけ多くの内容を入れることは、良い意思決定ではない。
 
コンセプトが定まっていれば、アニメーションでどんな内容を描くのか決めるときに、コンセプトに合っているかどうかで、なにを入れて外すのか明確に意思決定することができる。
 
今回の場合であれば、その内容が「学生に知ってほしい痴漢の真実」なのかどうかという基準で、なにを入れて外すのか松永さんと議論することができるのである。
 
この投稿を書いている時点で、今回のプロジェクトでは制作手順4(動画コンテを作る)のところまで進んでいるのだけれど、さまざまな意思決定でコンセプトが役立っている。

 

注目、応援、支援、よろしくお願いします!

今回の「学生に知ってほしい痴漢の真実 : アニメーション制作プロジェクト」は、2020年10月5日(月)に支援金の募集を開始して、2020年11月20日(金)にクラウドファンディングを終了することが決定した。
 
READYFORで今回のWebページが公開されるのは、10月5日(月)のクラウドファンディング開始日である。なので、それまではアニメーションの具体的な内容や、支援金のリターンについてなどの情報をお知らせすることができない。
 
アニメーションの制作に関しては、すでに最初の動画コンテを作っていて、今はそれを土台にして、絵コンテを修正しているところである。具体的にどんな内容のアニメーションを制作するかについても、開始日に公開されるREADYFORのWebページであれこれ紹介していく予定である。
 
アニメーションの内容が気になるという人は、クラウドファンディングの開始日まで待って、READYFORのWebページを追いかけてもらえたらと思う。クラウドファンディング終了後には、アニメーションの内容についても、ウゴモーションのブログでまとめて紹介する予定である。
 
ウゴモーションが初めて本格的に関わるクラウドファンディングが、どのように進んでいき、どのような結果になるのかは、今のところ定かではない。ただでさえ成功するかどうか不確かなプロジェクトであるのに、新型コロナウィルスの蔓延により、未来がより不確かなものになっているのが、悩ましいところである。
 
最後に、この投稿を読んでくれた人には、ぜひとも「学生に知ってほしい痴漢の真実 : アニメーション制作プロジェクト」への注目、応援、支援をお願いしたい。
 
もちろん、このプロジェクトには共感できない、同じ考えではないという人もいることだろう。だけれど、少なくとも私が痴漢犯罪の実態について学んで、松永さんの活動を近くで見てきたことからすると、今回のプロジェクトは社会を変えるための最初の一歩になる可能性がある。
 
だからこそ、1人でも多くの人に注目、応援、支援をお願いしたいと思っている。
 
クラウドファンディングの開始日まで、もう少しだけ待ってもらえたらと思う。
 

2020.08.07 / ウゴモーション / 小野直人

ウゴモーション / UGO MOTION

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