クライアント
CLIENT
昌栄印刷株式会社
昌栄印刷株式会社は、大阪の桃谷にある印刷会社です。とあるイベントで名刺交換したことがきっかけで、昌栄印刷のクリエイティブチームと仲良くさせていただいていて、実写系の動画制作を依頼していただきました。ちなみに、昌栄印刷さんは、関東大震災(1923年)が起こったときに、大阪で紙幣をすることになる可能性が発生して、打診されたことがあるそうです。それぐらい優れた印刷技術を持っている大阪の印刷会社になります。
≫ shoei – セキュリティー印刷の昌栄印刷株式会社
iroful / イロフル
irofulは、SAKAEテクニカルペーパー株式会社が立ち上げた新ブランド「paper paper」から、2021年11月に発売された用紙です。万年筆やGペンなど、インクの書き味や色彩を楽しむための用紙で、世界20カ国で販売される予定になっています。最近ではインク沼という言葉が知られるようになっていて、日本でもインクやペンの愛好家が注目されています。海外にはインクやペンの愛好家が、多くいるそうで、irofulはそんな愛好家たちが楽しむための高級な用紙になります。「paper paper」には、他にTomoe River FP / トモエリバーFPという用紙があり、これは「ほぼ日手帳」で使われています。
≫ iroful|paper paper/ペーパーペーパー
クライアントの要望
クライアントの要望は、irofulという用紙の魅力を映像で伝えたいということでした。SAKAEテクニカルペーパーの担当者さん自身が、万年筆とインクの愛好家であり、愛好家の立場から以下のような映像にしたいという強い要望がありました。
irofulという用紙の魅力は、さまざまなインクの発色が素晴らしく、インクが滲まないところである。また、愛好家として用紙選びで重要になるのは、ペン先が用紙の表面をどのように走り、どのようにインクが染み込んでいくのかである。
なので、万年筆のペン先がirofulの表面をさらさらと走り、さまざまな色彩のインクが用紙に染み込んでいく様子を、徹底的に映像化したい。用紙のスペックや説明などは必要なく、ペン先、インク、irofulそのもの、筆記を、とにかく映像化してほしいということでした。
企画立案
PLANNING
企画の課題
企画の段階で明らかになっていたのは、設定予算から考えると、映像に物語的な要素を加えることは不可能だということでした。そうなると、クライアントの要望通りに、ペン先、インク、irofulそのもの、筆記を映像化するしかないのですが、それで魅力的な動画になるのか? ということが課題になりました。
課題克服の考え方
映像に登場させらせるものが限らせている以上、その中で魅力を表現するしかありません。最初に考えたのは、筆記してもらう文字が美しければ、それだけで魅力がプラスされるのではないか?ということでした。そこで美しい文字を書く技術であるカリグラフィーのプロを探すことにしました。
もう1つ考えたのが、ペン先がirofulの表面をさらさらと走り、インクが用紙に染み込む様子を、可能なかぎりアップで撮影しようということでした。万年筆などのペン先というのは、思っている以上に小さくて、インクが染み込む様子など、肉眼では確かめることができないような微細な世界です。その小さくて微細な世界を、大きな映像で見ることができたなら、愛好家にとって、とても魅力的なのではないかと考えました。
企画のコンセプト
カリグラフィーのプロが筆記する美しい文字を、可能なかぎり大きく見せる!
制作作業
PRODUCTION
動画の撮影依頼
≫ VILLAGEPICS(ビレッジピクス) | Photo & Movie Office | フォトグラファー 大阪
村尾さんと2〜3度打ち合わせをして、村尾さんから頼まれたのが、カット表を制作してほしいということでした。どの方向から、どんなカットを、どれぐらい撮影するのか、それを表にしてほしいという頼みでした。YouTubeなどから参考動画をピックアップし、スクリーンショットの画像と一緒に、カット表を制作しました。
カリグラフィーの筆記依頼
カリグラフィーは、西洋で生まれた筆記技術のことで、アルファベットを美しく書くことができます。irofulという用紙が主役になるとはいえ、ペンを持っている手は撮影される可能性が高いです。なので、カリグラフィーをお願いするプロの人は、女性が良いだろと考えて、検索やSNSで探しました。
ウゴモーションの依頼を快諾してくださったのが、大阪でカリグラフィーなどを教えている、Boudoir(ブドワール)さんでした。Boudoirさんに具体的な制作内容についてお伝えすると、SAKAEテクニカルペーパーのTomoe River FPという用紙を愛用する大ファンでした。この良い偶然のおかげもあって、Boudoirさんには並々ならぬ情熱で、今回の撮影に臨んでいただくことができました。
≫ Boudoir ブドワール 秘密の小部屋 | Illustration & calligraphy | Japan
動画の撮影
また、SAKAEテクニカルペーパーから、万年筆でirofulに筆記するところを撮影してほしいという要望についても変更しました。というのも、万年筆はインクの種類を変えるのに、多くのパーツの洗浄が必要になるので、そこそこ時間が必要になるとのことでした。それでは、1日で撮影が終わらなくなるので、万年筆以外のペンも使用することにしました。
撮影当日は、早朝から村尾さん中心の撮影隊がしっかり準備をしてくれました。また、Boudoirさんも助手の人とともに、しっかり準備をしてくれていたので、私は「スタート!」「カット!」の声を出して、撮影した動画がOKなのかどうか判断することだけに集中することができました。
細かなペン先を充分な大きさで撮影するためには、カメラがBoudoirさんのほぼ真上に位置することになるので、Boudoirさんには普段と違う体制でのカリグラフィーとなりました。にもかかわらず、Boudoirさんは嫌な顔ひとつすることなく、アルファベットも日本語も、とても美しく書いてくれました。今回の動画制作でのMVPは、間違いなくBoudoirさんで、カリグラフィーにかける情熱は素晴らしいものでした。
動画の編集
具体的には、ペンが動いている場面から、ペンが動いている次の場面へというふうに、意図した箇所以外ではペンの動きが止まらないように編集しました。これは、人間をふくめた多くの動物が、動くものが気になって、つい目で追いかけてしまうという習性を利用するためでした。つまり、動画の最中にずっとペンが動いているので、一度目で追いかけ始めると、動画を見続けてくれる可能性が高まるのです。
完成した動画について、直接のクライアントである昌栄印刷株式会社の担当者さん、SAKAEテクニカルペーパー株式会社の担当者さんも、大変に満足していただきました。完成後、irofulを海外で販売してくれる代理店から、ぜひこの動画を使わせてほしいと、多くの要望があったそうです。
スケジュール
SCHEDULE
iroful(イロフル)の筆記動画のスケジュールについては、以下に記載していく。振り返ってみると、撮影日までにカメラマンの村尾さんや、カリグラファーのBoudoir(ブドワール)さんとの打ち合わせを重ねて、しっかり準備をするところに神経を使って、それが正解だったような気がします。編集にももちろん時間は使いましたが、映像が素晴らしかったので、完成までに大きく悩んだりすることはありませんでした。
具体的な日程
2022年01月 = 昌栄印刷株式会社から、制作の打診
2022年02月 = 正式に制作がスタートして、撮影日までの準備開始
2022年03月 = 準備を進めていき、動画撮影
2022年04月 = 動画編集をして、SAKAEテクニカルペーパー株式会社に納品
2022年05月 = 海外の代理店などからも好評であるとの声をいただく