「Google流 資料作成術」を読んで学んで納得

モーショングラフィックスに役立てようと、Google流 資料作成術を読んでみた! 画像その1

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モーショングラフィックスに役立つ理由?

それは、梅田の蔦屋書店をぶらぶら歩いていて、ふとGoogle流 資料作成術という本を開いたとき、たまたま読んでみた箇所に、次のような文章があったからだ。
 

データビジュアライゼーション、そしてデータを使ったコミュニケーションは、まさに科学と芸術の交わるところにあります

 
モーショングラフィックスを制作するという仕事について、僕が漠然と感じていたこと思っていたことが、絶妙の言葉で表現されているように感じた。モーショングラフィックスの場合、扱うのはデータよりも情報そのものが多い。だけども、その本質がコミュニケーションであるというのは、データでも情報でも同じことで、データビジュアライゼーションも、モーショングラフィックスも、まさに科学と芸術の交わるところに立っている。
 
Google流 資料作成術をすぐさま購入して、映画を見て、帰宅して読んでみると、いろいろな意味でとても優れている書籍だった。ということで、今回の投稿では、著者のことから本の概要、僕か重要だと感じたところまで、あれこれ紹介していきたいと思う。
 
デザインやデータを扱う仕事をしている人は、初歩のところから、奥深いところまで、多くのことが学べると思うので、ぜひ読んでみてほしい。

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コール・ヌッスバウマー・ナフリックはどんな人?

Google流 資料作成術(Storytelling with Data)を執筆したのは、コール・ヌッスバウマー・ナフリックという女性だ。「ひどいパワーポイントを世界からなくす」というミッションを掲げ、2013年にGoogleを退社して、その後は、企業や非営利団体でビジュアルコミュニケーションの研修やワークショップを行っているとのこと。
 
Googleの人事担当上級副社長を務めたことがあり、「ワーク・ルールズ!」という本を執筆して大きな話題となった、ラズロ・ボックが、2015年に彼女について語っている。
 

コールには、物事をわかりやすく表現する才能がありました。例えば、すばらしいマネージャーと出来の悪いマネージャーの何が違うのか、といった難しい内容を分析するように言われたときも、反論の余地がないほど、簡潔にわかりやすく表現してくれました

 
ちなみに、2009年にGoogleが良い管理職の条件を見つけるために行ったプロジェクト「Project Oxygen」では、膨大なリサーチの資料をまとめて分析結果を伝える仕事で、大きな役割を担ったのがコールだったそうだ。「Project Oxygen」はその後、ニューヨーク・タイムズ紙で取り上げられて大きな反響となり、ハーバード・ビジネス・レビューの人気ケーススタディーにもなったとのこと。
 
コールは、もともと数学とビジネスが交わる分野に魅了されていたそうで、大学でも数学とビジネスを専攻していたそうだ。金融機関でクレジットリスクマネジメントの分析を仕事とするようになって、複雑なものを、いかに単純にわかりやすく見せるかという工夫を重ねていった結果、多くの上司の注目を集めることになって、ビジュアルコミュニケーションの価値を理解したとのこと。
 
Googleに入社してからは、データビジュアライゼーションの原理を学んだり研究もしたそうで、自分が試行錯誤して見つけた方法がなぜ効果的だったのか、その理由を理解することにつながったそうである。Google流 資料作成術に書かれているのは、そんなコールがGoogle全社で行なっていたデータビジュアライゼーションのコースや、Google退社後に行ってきたワークショップを体系化したものである。
 
Google流 資料作成術に書いてある内容、レッスンの数々にいちいち納得してしまうのも、そりゃ当然だろうと思ってしまう著者コールの実績である。

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数字から本質を見つけてストーリー伝える!

Google流 資料作成術の導入部に書いてあって、確かにそうだなと感じたのが、IT技術の発展によって、膨大なデータを集めることができるようになったのと同時に、アプリケーョンを使って膨大なデータを簡単にグラフ化できるようになったのが、現代だというところだ。よくよく考えてみれば、IT技術が発展するまでは、こんなことができるのは科学者や高度な専門職の人に限られていた。
 
著者は、膨大なデータを集めることができ、それを簡単にグラフ化できるようになったせいで、データをグラフ化すること自体が、資料作成だと思われるようになったことに、大きな危機感を感じている。
 
Google流 資料作成術は、実用的なレッスンが書いてあるのと同時に、数字からなにが重要なのかその本質を見つけ出して、そのストーリーを伝えることの重要性を何度も書いている。どんなに膨大な量のデータも、どんなに優れたリサーチも、それを的確に読み解いて、データから見えてくる本質を伝えることができなければ、意味がないからだ。 
 
Google流 資料作成術には、どんなレッスンがあるのか、触りだけでも紹介していこう。
 
 

第1章 コンテキスト(文脈)を理解する

ここでのレッスンでは、いきなりデータを扱うのではなく、まずその資料を作成する上で、誰に、なにを、どのように伝えるか、出発点を考えることを教えてくれる。そして、次にデータから読み解くことができた内容を、「3分ストーリー」という方法で具体化して、「ビッグアイデア」という方法でもっとも重要なことを理解することを教えてくれる。
 

第2章 相手に伝わりやすい表現を選ぶ

ここでのレッスンでは、この世にあるさまざまな表現のグラフの中から、理解しやすいグラフと、理解しにくいグラフを実例とともに紹介している。また、グラフの尺度を操作することで、伝えたいポイントを強調することの危険性も指摘していて、とても役立つ。また、デザイン的なところについても基礎を描いてくれているので、初心者にとって理解しやすい。
 

第3章 不必要な要素を取りのぞく

ここでのレッスンでは、資料を見る人が情報を受け取りやすくするために、認知的負荷をいかに減らせば良いのかということを具体的に教えてくれる。認知的負荷というのは、誰もが一度は見たことがあるだろう、なにが重要な情報なのかわからない資料やWebページに感じる、ごちゃごちゃ感のことだ。
 

第4章 相手の注意をひきつける

ここでのレッスンでは、人間がどのようにものを見ているか脳の仕組みを解説して、無意識的視覚情報(無意識で知覚する情報、preattentive Attributes)について教えてくれる。この無意識的視覚情報というのは、相手の注意を意図するところに素早く集めたり、情報に視覚的な優先順位をつける、という2つのことに非常に有効であることが、実例で示してあって、とても理解しやすい。
 

第5章 デザイナーのように考える

ここでのレッスンでは、アフォーダンス(行為の可能性・意味)について解説していて、その製品をどのように使うかを明確に示す、デザインに内包される機能の重要性を教えてくれる。重要なものを強調する、気を散らすものをなくす、情報に明確な「視覚的階層」を作るという3つが理解できるようになっている。
 

第6章 モデルケースを分解する

ここはレッスンというより、実際に数種類のグラフを見ながら、グラフの中にあるパーツやデザインとしてどのように機能しているかを解説している。折れ線グラフ、説明つき予測折れ線グラフ、100%積み上げ縦棒グラフ、正負の積み上げ棒グラフ、積み上げ横棒グラフの5種類の実例を読み解いている。
 

第7章 ストーリーを伝える

ここでのレッスンでは、童話の「赤ずきん」の物語をもとにして、事実の羅列では物語が機能しないこと、物語が三幕構成であることを教えてくれる。ストーリーの始まり、中盤、ストーリーの終わりに、何を描くべきかを解説するとともに、ストーリーを組み立てる方法についても解説している。
 

Google流 資料作成術では、第1〜7章までのレッスンをまとめて、実際にどうやってデータビジュアライゼーションを創っていくか、その過程も紹介している。最後まで読むと、コールがどんなことを考えながら、データを見せようとするのかその全貌が理解できて、とても勉強になる。

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大切なのは「視覚認知のゲシュタルトの法則」?

仕事の資料を作っていたり、大量の文章を書いていたりする時、言葉の意味というか、本来はひとまとまりであるはずの1つ1つの文字がバラバラになったように感じられて、頭の中で意味がわからなくなってしまう瞬間がないだろうか?
 
これが世に言う「ゲシュタルト崩壊」というやつで、僕も大量の文章を書いたりして、頭が疲れてくると、ときどき起こる。
 
Google流 資料作成術という本を読んでいて、僕がなにより驚いたのが、「ゲシュタルト崩壊」というのが、20世紀初頭にドイツで生まれたゲシュタルト心理学に由来しているということだった。そのゲシュタルト心理学での知覚心理についての研究から生まれたのが、「視覚認知のゲシュタルトの法則(Gestalt Principles of Visual Perception)」というもので、人間がどのように知覚刺激を受け取り、秩序を見つけるのかを説明している。
 
 

法則1 近接

物理的に近くにあるものを同じグループとして捉えること。
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法則2 類似

類似の色、形状、サイズ、向きを持つもの同士を、同じグループとして捉えること。
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法則3 囲み

物理的に一緒に囲まれているものを、同じグループとして捉えること。
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法則4 閉合

人間は、自分の頭の中にある構造に当てはめることを好むという原理で、バラバラのものでも、すでに知っているわかりやすい形として捉えようとすること。
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法則5 連続性

閉合に近い法則で、あるものを見たときに、もっとも自然な形を追求して、それが明らかに存在しない場合でも、勝手に連続性を作り出してしまうこと。
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法則6 接続

線などで物理的につなげられているオブジェクト同士を、同じグループとしてとらえることで、同じ色、同じサイズ、同じ形状よりも、より強い関連を連想させること。
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デザインの仕事をしている人であれば、「視覚認知のゲシュタルトの法則」を感覚と経験でつかんでいるだろうが、あらためて解説を読んでいくと、納得する内容ばかりである。どこからどう考えても「ゲシュタルト崩壊」より、「視覚認知のゲシュタルトの法則」のほうが、はるかに重要なゲシュタルトであること間違いないと思ったのだが、どうだろう?

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可視化とストーリー化で、優れた意思決定!

Google流 資料作成術の中で、著者のコール・ヌッスバウマー・ナフリックは、Googleのような先進的な企業でも、集めてきた膨大なデータやリサーチを、優れたデータの可視化とストーリー化しないことには、優れた意思決定ができないということを何度も述べている。
 
コール・ヌッスバウマー・ナフリックはどんな人?の章でも紹介したように、Googleほどの企業でも、Project Oxygenの結果が出るまでは、誰のどんな要素が優れた管理職の条件なのか、まったく理解していなかった。
 
Google流 資料作成術を読んでいると、はたして自分たちが働いてきた会社では、優れた意思決定をするために、ちゃんとデータビジュアライゼーションされた優れた資料が使われていたのだろうか? かつて自分が作った資料は、データを単純にグラフ化しただけでなく、ストーリーとともに提示されていただろうか? と考えてしまう。
 
流れていった過去や愚かさはどうすることもできないが、Google流 資料作成術を学んだ今であれば、誰かの資料やグラフを見て、それが優れているかダメなのか、簡単に判断できる。そして、Google流 資料作成術が教えてくれることは、完全な意味でモーショングラフィックス制作に役立つ。
 

  • モーショングラフィックスの中身を創るのに、ちゃんとコンテキストを考えたか? 
  • 相手に伝わりやすい表現を選び、不必要な要素を取り除いているか?
  • 視覚認知のゲシュタルトの法則がちゃんと機能しているか? 崩壊していないか?
  • 事実や情報の羅列ではなく、ちゃんとストーリーがあって機能しているか?

 
もちろん、これらのことは、今までのウゴモーションが制作してきたモーショングラフィックスでも、考えていなかったわけではない。わけではないけど、ここまで明確に考えて、計画したり、判断したり、構築していたかというと、正直まだまだだなと感じている。
 
今の僕は、モーショングラフィックスを創るためのテクニックも大切だが、その核となってところを充分に考えることが、お客さんを良い結果へ導くのに重要だと感じていて、Google流 資料作成術はそんな僕のニーズにぴったりの良書だった。

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最後に...

もし、あなたが自分たちの仕事で使っている資料がわかりにくくて、優れた意思決定ができていないと感じていたら、ぜひGoogle流 資料作成術を読んでみることをおすすめする。単に資料が見やすくなるという以上に、データの中でなにが重要で、次に自分たちがどんな意思決定をすべきなのか、気づいて見えるようになるだろう。
 
著者のコールは、資料を作ることに充分な時間をかけることの重要性も書いていて、それは「誰に、何を、どのように」に伝えるべきかにおいて、もっとも必要なことかもしれない。現代はとにかくスピードが重視されていて、優れた意思決定よりも、素早い意思決定のほうが大切にされている。
 
確かに、それはそれで重要だと思うけれど、会社や自分のこれからを変えるような意思決定が必要なときには、素早い意思決定よりも、優れた意思決定のほうが重要だろう。充分に時間をかけて作られたデータや資料から導き出された意思決定であれば、回り道をすることも少ないだろうし、自信を持って意思決定を行動に移せるだろうから。
 
ちなみに、Google流 資料作成術という本は、会社で働いている人だけでなく、デザイン系の仕事にしている人にとっても、とても役立つと思う。今回の投稿を読んで、気になった人はぜひ自分でもページを開いてみて、彼女が教えてくれることを実践してみよう。
 
個人的にも、この本で学んだことを、モーショングラフィックス制作につなげて、クライアントさんの依頼をより高度に実現できるようにしていきたい。
 
 

2017.03.17 / ウゴモーション / 小野直人

ウゴモーション / UGO MOTION

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